火曜日に会いに行くお話

私は英語のメールマガジンを週二つ、もう10年以上書いています。
(読者さんの数は、2万人以上で、発行は今年1000号を越えました)
そのうちの一つは Tuesdays With Morrie というテレビ映画のセリフを訳して、その英語表現を紹介しています。
全セリフを始めから訳しているので、200回を越えていますが、
その最後、クライマックスを先日、訳しました。
5年かかって、いよいよラストが近づいてきました。
私は、このような英文を訳すときは、まず、その人の気持ち、感情になることを行います。
直訳でもなく、意訳でもなく、自分がその人の気持ちになって、話す言葉を選んでいきます。
ですので、嬉しいシーンなら嬉しい気持ちになりますし、悲しいシーンなら自分も悲しくなります。
その人の気持ちになることから始めます。
文字を日本語から英語に置き換える作業ではなく、
シーンからその人の気持ちになって、自分の持っている言葉でそれを話す、
そういうやりかたです。
人は、自分の頭にあるものを、音楽や絵や映像や文字や形、なにかモノにすること、それが料理でも、表すこと、造ることを楽しみます。
私は、英文から気持ちや感情を汲み取り、それを自分の頭に作って、そこから自分の言葉で出すコトが好きで、楽しんでいます。
他に何か、芸術的なことでもできれば、、、とも思いますが、今はこれだけが、私が出来るコトです。
今回のシーンは、病気でもうすぐ命がつきる恩師 Morrie と、その別れを受け入れ難い教え子 Mitch の最期の会話です。
水曜の朝、自分の気持ちを乗せるため、作業を途中で中断できず、開始そうそう涙と鼻水がボロボロになりながら数十分、書き終えて、それから朝の仕事に出掛けました。(笑)
一般の英語-日本語の訳と、私のやり方の違いは、例えば、こんな感じです。
Morrie: This is the way we say good-bye.
この英文を訳すなら
これは、私達がサヨナラを言う方法です。
と、なります。
教え子 Mitch は、サヨナラするのが苦手で、先生は、それを幾度か教えようとしていました。
しかし、私が、その日の朝、このシーンの訳を始めて、このセリフに来たとき、この言葉の意味が突然、別の意味に変わります。
先生 Morrie は、サヨナラのやり方を、
今、この場での教え子と自分との死別で教えている、
これはただ方法を教えているのではなく、二人のホントウノワカレを告げていると。
だから、私から出て来た言葉は、
Morrie: これが、お別れなんだよ。
でした。
教え子の Mitch は、先生がサヨナラのやり方を教えてくれていると思うのですが、
でも、これがホントウノワカレになる予感を先生の様子から急に感じてしまいます。
だから、うろたえて、
Mitch: I'm gonna come back next Tuesday, okay?
I'm gonna bring, Janine with me, okay, next Tuesday.
Mitch: 僕は、次、来ますからね、来週の火曜ですよ、いいですね?
Janine を連れてきますからね、いいですね、次の火曜日ですからね。
毎週、先生と会う火曜日が、来週もある、約束したいと、
今日が、今、この時が、永遠のサヨナラでは無いことを確約したがります。
Morrie: This is the way we say good-bye.
Morrie: これが、お別れなんだよ。
直訳でも意訳でもなく、私から出た言葉です。
、、、
ここで、話は、パート2、私の思い出、3年前の友達とのワカレになります。
彼は小学校からの剣道の付き合いでして、同じになった高校では剣道部キャプテンをしていました。
私たちは、二人兄弟、兄が6才年上で、兄同士も高校で剣道部と、同じでした。
文化祭でバンドをやったり、映画を撮ったり、浜田省吾のコンサートにみんなで行ったり、
彼とは本当に楽しく過ごしました。
彼は剣道で大学に行き、卒業してバーテンダーになります。
いつもガンバリ屋、弱音を言わず、アントニオ猪木が好きで、
その後、とうとう銀座に自分の店を持って、素敵な奥さんと、二人の剣士を育てます。
数年前、久々の東京で、よし、店に行こうと電話をしてみると、今日は休みです、と言われました。
口調から、なにか嫌な予感がして、軽い挨拶のハガキを送ってみましたが、返事はありませんでした。
いつも通りの年賀状は、その後も普通どおりなので、無事だろうと自分に言い聞かせました。
それから、また年月が流れ、共通の高校友達から、何回か、集まろう、飲もうと連絡があります。
でも、いつも、流れます。
そんなある日の夜、レッスン中に、その共通の友達から突然電話が入ります。
メールではなく、電話?
始めてのコトなので、サッと血の気が引きました。
目の前の生徒さんに、どうしても出ないといけない電話です、と断り。
電話の内容は、やはり、あの時の悪い予感が、本当だったということでした。
ただ、お店には出てるということなので、お店に会いに行きます。
もちろん、お店では他のお客様がいますし、とにかく、彼の身体の具合のことは一切聞けません。
そのとき、私が決めたのは、隔週火曜日に彼に会いに行こう、ということでした。
普通にお客として、数ヶ月お店に通いました。
彼は、帰る客に、店の外に出て、その背中にお辞儀をします。
雪の降る夜、その夜も、彼が店の外に出て来る気配を背中に感じました。
私は知っています。
寒いから、もうイイから、中に入ってくれと、
言えば言うほど、彼を外に引き留めてしまうことを。
私が出来るベストは、足早に彼の視界から立ち去ることだけなのだと。
今も、雪の降る夜は、そのシーンを思い出します。
愛しい人に伝えられないという辛さがあるんだということを。
彼はゴールデンウィーク頃には店に出られなくなりました。
私は病院へ通い始めます。
長居はしません。
彼が話したいなら、その話を聞き、
訪ねたときに寝ていたら、手土産を置いてそのまま帰ります。
その年の翌年明ければ、新年早々、田舎で10年ぶりの高校の同窓会があるのですが、
彼は、夏のオリンピックが見れるだろうか?そんな話をします。
そんなふうには思いたくないので、私は何も言いません。
私は、ただただ、彼が話すのを聞いていたかった。
私が話すことで、彼の時間を奪うのが嫌だった。
彼が話すことで、彼が楽に感じられることを望む。それが私ができること、精一杯だった。
こんな話も彼はしました。
知ってるか?この病院に入って、退院する人はいないんだよ。
それもなんとなく分かっていました。そんな特別な病院でしたので。
ある日、二人部屋から個室に移るんだ、少し嬉しそうな顔で言います。
プライバシーの問題は、本当に大変なんだろうな、と思いました。
今回の見舞いは、部屋を移った先を看護師に尋ね、廊下の奥の部屋に向かいます。
と、そのとき、医師が扉から出てきました。
先生の視線に、とっさに、
あっ、長居はしませんので、
と、勝手に話すと、医師は、できるだけ短めに、と返答。
それで、冗談を匂わせようと、
一分で帰りますよ
と、
その医師から、もっと居ても大丈夫ですよー、なんてコトバをもらいたくて、
でも、しかし、医師の次の言葉は、
できれば、そうお願いします。
と。
頭の中が真っ白になりました。
扉を開けると、彼はベッドに座り、奥さんがベッドの横に座っていて、
彼は、上目で私を見て、
よぅ、
と、笑うのも辛そうなのが、彼の全身から感じられます。
私は、
医師が、手短かに、と言ったから、今日は帰る
と告げます。
何かの治療で、すぐれない時を数度、見てるので、
今回も、一時的な
と思いたかったのです。
何度も、
また来るから、また来るから、元気で、ガンバって、
と、うろたえて、、、
手を握って、、、
、、、
それが、彼と話せた最期でした。
まるで、この映画のシーン、教え子 Mitch と同じ気持ちなんでしょうね。
だから、その日、訳をしながら、朝から号泣でした。
私にとって、英語は、ゼンゼン勉強ではないのです。
私にとって、英語は、感情と表現なのです。
私にとって、英語は、人間のドラマそのものなのです。
だから、私は英語を教えたいのです。
それは、勉強ではなく、
感動的な映画をコンサートを舞台を一緒に見に行って、その感想をシェアしたい、ただただ、そんな気持ちなのです。
パート3 です。
それでは、朝から号泣でした、Tuesdays With Morrie テレビ映画のラスト、クライマックスです。
日本語訳だけ楽しんで下さって、それで構いません。
タイトル:手を握って
Morrie: Oh, I-I picked the spot to be buried.
It's on a hill under a tree.
It's got a pond.
Great place to think.
Morrie: あっ、わしな、お墓の場所を決めたんじゃ。
丘で、木の下じゃ。
池があって。
考えるのにいい場所じゃ。
Mitch: You plannin' on doin' a lot of thinkin' there?
Mitch: 先生、そこでいろいろ考えようと計画しているんですか?
Morrie: I plan on being dead there.
Will you come and visit,
tell me your problems?
Morrie: そこで亡くなっていることを計画してるんじゃ。
(先生は死んでるので、考えられない)
君も来てくれるかい、
また相談しに。
Mitch: Won't be quite the same,
not hearing you talk.
Mitch: おんなじじゃないですよ、
先生のお話が聞けないですし。
(先生は死んでるので)
Morrie: Well, I'll tell you what...
when I'm dead, you talk, I'll listen.
Morrie: うーん、そうじゃなぁ、、、
わしが死んだら、
こんどは、君が話して、わしは聞こう。
(これまで、病気の先生は10数回、人生の講義として Mitchに話し、教えていた)
Mitch: What if, uh, you know,
after you're, uh...
What if all this was just...
What if...
What if all this was just wasted on me?
Mitch: どうなるんですか、もし、ほら、
先生がいなくなって、、、後で、、、
もし、これら全てが、、、
もしも、
もしも、これら全部が私にとってムダになったら?
Morrie: Well, you think that could happen?
Morrie: うーん、君は、そんなことが起きると思うのかい?
Mitch: Well, out in the world...
you know, outside this room...
things aren't so clear.
Your wisdom and your aphorisms...
"Once you learn how to die,
you learn how to live."
What if you can't learn that?
What if you just want to run like hell
when you see death coming?
What if, uh, we're like your father, you know?
What if we can't learn it
because we're not really like you?
Mitch: えー、外の世界じゃ、、、
ほら、この部屋の外では、、、
モノゴトってのは、そんなにクリアではなくって。
先生の知恵や格言は、、、
「一旦、いかに死ぬかを学べば、
いかに生きるかを学ぶ」って
もし、人はそれを学べないとしたら?
もし、人は、死を間近にしたら、
地獄のような、、、突っ走ってしまうとしたら、
もしも、私たちが、先生のお父さんみたいで、
(先生の父は、無学で、強盗から走って逃げ、心臓麻痺で死亡)
もしも、私たちが、それを学べなくって、
だって、私たちは、先生みたいではなくって?
Morrie: Yeah, but you are like me.
Everybody is.
Morrie: あぁ、でも、君は、私みたいだぞ。
みんなそうじゃ。
Mitch: - Nobody's like you.
And if it took your death to teach me these things,
then I'd rather not learn 'em.
All the things you said, I'd give 'em back in one minute.
If this wasn't happening to you...
Mitch: だれも、あなたみたいなんかじゃない。
そして、
もし、
これらの教えを私に伝えていくことが、、、
(これまで、病気の先生が10数回、人生の講義として話し、教えていた)
先生の命を削っているのなら、、、
僕は、もう学びたくなんかない。
先生が教えてくれたこと全て、、、
今すぐ全部お返しします。
もし、もしも、それで、先生が死なないのなら、、、
Morrie: It's happening.
It's-It's going to happen.
Morrie: それは、起こるんじゃ。
それは、、、それは、もうじき起こるんじゃよ。
Mitch: Yeah, well, I don't want it to happen.
I don't want you to die.
That poem you're always quoting,
"We have to love one another or die"?
We die anyway, don't we?
We learn to love somebody and they die,
or-or we die or it dies.
What's the point?
Wha... What do we learn really from all that suffering?
Mitch: えぇ、うん、でも、僕は、嫌なんです。
先生が死ぬのが嫌なんです。
先生がいつも話してくれた詩、
「お互いを愛しあうのか、それとも、死ぬか?」
どっちみち、死ぬんでしょ?
誰かを愛すことを学んで、でも、その人が亡くなって、
それとも、二人とも死んで、、、
なんの意味があるんですか?
こんな、こんな辛いことから、いったい何を僕らは学ぶんですか?
Morrie: Hold.
Morrie: 手を、、、握っておくれ.
(先生は、Mitch に手を握ってくれと頼みます)
Mitch: I'm sorry.
I just can't accept it.
I don't want you to die.
I guess I flunked the course, huh?
Mitch: すみません。
でも、受け入れられないんです。
先生に死んでほしくない。
僕は、先生のこの講義は落第ですよね?
Morrie: Death ends a life,
not a relationship.
Poor Mitch, you still don't know
how to say good-bye, do you?
Look at me.
Don't you understand?
You touched me.
What if you hadn't come back to see me?
Huh?
This is the way we say good-bye.
Morrie: 死は、命を終わらせる、
でも、関係は終わらせない。
可哀想に、Mitch、
まだ、別れの告げ方を学んでいないね?
こっちを見て。
分からないのかい?
君は、私に触れているじゃろ。
もし、君が、こうやってわしに会いに来てくれなかったら?
な?
これが、お別れなんだよ。
(Mitch は、自分の両の手で先生の両手を握ります)
Morrie: Love you.
Mitch: I love you too, Coach.
Morrie: ありがとうな。
Mitch: 先生、私も愛しています、コーチ。
Morrie: I know.
You wanna know something else?
You always will.
Morrie: わかってる。
他に、なにか知りたいか?
きっと。
Mitch: I'm gonna come back next Tuesday, okay?
I'm gonna bring, Janine with me, okay, next Tuesday.
Mitch: 僕は、次、来ますからね、来週の火曜ですよ、いいですね?
Janine を連れてきますからね、いいですね、次の火曜日ですからね。
Morrie: Of course, next Tuesday.
We're Tuesday people.
Morrie: ああ、火曜な。
わしらは、火曜じゃからな。
ーー ここまで

